Linkids | リンキッズやまなし

医療記事

リンキッズ7・8月号(54ページ掲載)

共に生きる「多機能型重症児デイサービス 笑む」の想い

重症児が笑顔でいられる地域での暮らし方、重症児とその家族の幸せの在り方を考え誕生した 多機能型重症児デイサービス 笑む」の活動を本誌の中で6回に渡り紹介してきました。 ここでは、今おかれている現状とこれからのことをお伝えしていきます。   

「多機能型重症児デイサービス 笑む」に取材で訪れたのは土曜日。
今までで一番、多くの子どもたちで賑わっていました。
理由は、支援学校がお休みということと、他の兄弟の習い事や世話のため。当然、看護士も補充し対応追われます。
呼吸器や遺漏を装着している子、吸引が必要な子など1人1人ケアも違ってきます。しかし、どうしてもマンパワーが足りません。
「昔なら亡くなってしまうケースが、今は医療が進み命を助かる子どもたちも増えてきました。
また同じく、昔なら一生病院で過ごすしかない子どもも、家に帰れるようになってきました」。
昔は重症児を隠して育てるような風習や偏見の目があったことは事実です。
ですが医療の発達と共に“この子も家族の一員として家庭の中で育てたい”と家族の考えも変わってきました。
自分の子どもは自分で育てたいと思うのが家族の想い。「だから、ご家族の想いに応えていく必要性があると感じています」。

最近、少しずつではあるそうですが、笑むのようなデイサービスも増えてきて、露木グループのような「訪問介護」も拡大しつつあるそうです。
このことは喜ばしいことですが、反面、絶対的人数が不足していることも事実です。
「これから注目されるのは、吸引や注入などができるヘルパーさんの存在です」と言います。
高齢者へのヘルパーさんは大勢いるのですが(それでも人手不足)、医療を必要とする重症児を看ることができるヘルパーさんは圧倒的に少ないようです。
そのため、笑むの2階でヘルパー事業も始めたと教えてくれました。

さらに、「介護支援制度」は高齢者にとっては充実した内容ではあるそうですが、子どもたちにとっての支援はまだまだ整っていないそう。
例え、ケアマネージャーが支援のプランを立てても、利用できる施設も不足しているのが現状だそうです。

高齢化が進み、全国でも“地域の大切さ”“地域とのつながり”が重要視されていますが、重症児も同じです。
子どもは「親が育てる」という考え方を「社会で育てる」、「自分の子ども」ではなく「社会の子ども」という考えてほしいと話します。
これは重症児をはじめ、貧困家庭、虐待、核家族化などが抱えている問題も含め、社会を取り巻く環境を変えていかなければ解決しないのではないかと問います。
「どの子も幸せであるべき。生きづらさを感じない仕組み作りをしてほしいですね」。

重症児の実際の人数の把握が行政で始まり、保健所との連携も始まったという山梨県。
今後も先行きを見守っていきたいですね。

重症児のママや家族が思うことのひとつに、「社会との共生」があります。
家族の想いはだれでも同じ。おしゃれな服を着せたいし、お風呂も毎日入れてあげげたい。
もちろん幼稚園に行きたいし、お友達と一緒に勉強したい。「みなさん、普通の生活を当たり前に送りたいんです。
だから、それに合わせた社会になってほしい。だれもが排除されない世の中に。健常者も障がい者も一緒に暮らしていく社会に」と。
それには、笑む自体も「されることを待っているのではなく、どんどん外に出ていかなくては」と、相互関係の必要さを行動で表しているそうです。

最後に、「多機能型重症児デイサービス 笑む」が開設して半年が経ちました。

この間、多くの励ましや応援があり、ここまでやってきたそうです。
旅行に行けない子どもたちのために「プラネタリウム」も開催したり、「暮らしの保険室 晴ればれ」も開設しました。
子どもも昔子どもだった人も無料の「こども食堂」も始めたそう。
その反面「散歩に行くことやイベントに参加することで、見かけた人がなにかを感じてもらえれば、それで十分なのでSNSで発信することを辞めました」。
時代が求める便利さではなく優しさ。それだけあればきっと地域の人たちが自然と見守ってくれるはずです。

 

露木社長         笠井所長

与えることの喜びよりも得るものの方が大きいです 

子どもたちのために何かをしたい!って気負う気持ちより、ここに来てくれてよかった!と単純に嬉しいです 

この子たちが当たり前に過ごしていくこと自体が発信です 

記事一覧へ