Linkids | リンキッズやまなし

医療記事

9・10月号

こんな症状ありませんか? 子宮のトラブルと知識

外出自粛に在宅勤務、家族が家の中にいる時間が長くなればなるほど、 自分のことを後回しにしてしまいがちなママ。 月経やおりものの異常、不正出血、 腰痛などに悩まされていたとしても「つかれかな?」と見過ごしてしまうこと、ありませんか? じつは、こうした症状が子宮のサインということも少なくありません。 妊娠中のママも、子育て中のママも、 自分に必要な知識として知っておいてほしい子宮と子宮のトラブルについてまとめます。   

子宮とトラブルについて 

 

 月経やおりものの異常、不正出血、腰痛など…。女性が日頃、悩まされがちなさまざまな症状は、実は子宮からの何らかのサインという場合も少なくありません。

さらに言えば、子宮の病気があっても自覚症状がない場合も多くあり、子宮以外の病気の可能性も。「大丈夫」と見過ごしがちなトラブルではありますが、

正しい知識を身につけて、安易な自己診断はしないようにしましょう。 

 

1.子宮のしくみ

 

子宮は下腹部にある、鶏卵くらいの大きさの機関です。

閉経の頃からだんだんと小さくなり、最終的に親指大くらいまで縮みます。

子宮は「子宮体部」と「子宮頸部」の大きく2つに分けられ、

「子宮体部」は子宮の上部3分の2を占めるふくらんだ部分を、

「子宮頸部」は子宮の下部3分の1を指す。

子宮体部から続く細くくびれた部分をさします。

それぞれ起こりやすい病気も異なり、「子宮体部」は子宮筋腫や子宮体がん、

子宮内膜症などがあり、「子宮頸部」は子宮筋腫、子宮頸がんがあります。 

 

 2.知っておきたい主な子宮の病気 

 

「子宮筋腫」 

 

特徴と原因 

 

婦人科の病気のなかではもっともポピュラーなトラブルで、

子宮の筋肉にかたいコブのようなものができる病気です

30代以上の4、5人に1人は筋腫をもっているといわれています。

筋腫ができる原因はまだよくわかっていませんが

筋腫の成長には女性ホルモンが影響しているものと考えられています。

筋腫の数は、ひとつだけという人は少なく、数個から10数個というケースがほとんど

子宮筋腫は良性の腫瘍ですが、月経のトラブルや不妊、

流産、早産などの原因になることもあります。 

 

症状 

 

筋腫ができる場所や大きさによって症状も違ってきますが、とくに自覚症状がない人もいます。

もっとも多い症状は、月経量が増える過多月経のケース

その結果、貧血になって、動悸や息切れ、めまいなどが起きることがあります。

また、月経が長びく過長月経」や不正出血、おりものの増加、

月経痛、腹部のしこりなどもよくみられます。

そのほか、筋腫が大きくなってくると周囲を圧迫するため、

便秘や頻尿、腰痛などが起きることもあります。 

 

治療 

 

治療法には手術と薬物療法があり、筋腫のできた場所や大きさ

症状の程度、その人の年齢や妊娠希望があるかどうかなどによって方法を選択します。

自覚症状があまりない場合や、閉経が近いまたは閉経後の場合、

手術や薬物療法は行わずに、定期的に検査を行って経過を見ることもあります 

 

「子宮内膜症」 

 

特徴と原因 

 

子宮内膜は、子宮のいちばん内側(内腔)にある膜。

女性ホルモンの作用で、周期的に増殖と剥離を繰り返しています。

ところが、この子宮内膜が、腹膜や卵巣など子宮の内腔ではないところに発生し、

増殖することがあります。これが子宮内膜症です。 

 

子宮内腔以外のところにできた子宮内膜も、

その場所で周期的に増殖と剥離を繰り返します。

それによって、強い月経痛を起こしたり、

周囲の臓器と癒着したりして、不妊の原因になります。 

 

子宮内膜症は10代後半から発生して、加齢とともに増加。

子どもを産み育てる世代(生殖年齢層)にある女性の510%は罹患しているといわれていますが、

40代後半の閉経期を迎えると、急速に減少します。 

 

なお、病巣が卵巣にできたものを「子宮内膜症性チョコレート嚢腫」といいます。

強い月経痛や腰痛などの痛みだけでなく、卵胞の発育障害や排卵障害を起こし、

不妊の大きな原因になります。

また、サイズが大きくなると破裂したり、

卵巣がんのリスクも高めてしまったりすることがわかっているので、早めの治療が必要です。 

 

症状 

もっとも多い症状は強い月経痛で、子宮内膜症がある人の8割強にみられるそう。

その他、月経時以外の下腹部痛、腰痛、性交痛、排便痛も多くみられます。

また、不妊の原因となることも多く、月経異常(月経過多、不正出血など)

疲れやすいなど症状もでます。 

また、頻度は少ないものの、内膜が骨盤内の臓器の外に広がると、

消化器、泌尿器、呼吸器などにも症状があらわれます。 

 

治療 

おもな治療法は薬物療法と手術です。

症状が比較的軽い場合、また妊娠を希望しない場合は、

とくに治療はしないで、定期的に診察を受けて経過を見ることもあります 。

 

薬物療法は対症療法(症状をやわらげる)として行われ、

ホルモン療法とそれ以外とに大きく分けられます。ホルモン療法には、

LEP剤(エストロゲンとプロゲステロンの合剤であるホルモン剤)

で排卵を抑える治療が効果的です。

ほかに、卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌を抑えるホルモンで

閉経したような状態にする「偽閉経療法」などがあります。

ホルモン療法以外では、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や漢方薬などが使われます。 

 

手術は、子宮内膜症が薬物療法でコントロールできなくなった場合や、

チョコレート嚢腫がある場合に検討されます。

おもな手術には子宮や卵巣の全摘出術と、卵巣を残す保存療法があります。

卵巣を全摘出すると閉経状態になります。

再発の可能性はありませんが、その後、更年期症状のケアや脂質異常症、

骨粗鬆症などの予防が必要になります。

卵巣を残す保存療法では、腹腔鏡または開腹で病巣だけを切除します。

保存療法では再発の可能性があるため、手術後にまた薬物療法が必要になる場合があります。 

 

監修/産科婦人科清水クリニック
清水洋一 院長
甲府市向町450-5
055-221-0341

記事一覧へ